企業や組織における情報漏えいの多くは、「人為的なミス」や「設定の不備」が原因です。なかでも、パスワード管理の甘さに起因する情報漏洩は年々増加傾向にあります。本記事では、2020〜2025年に国内で発生した代表的なパスワード・個人情報漏洩事例を絞って紹介します。【2020~2025年】国内で実際に起きたパスワード・個人情報漏洩事件以下は、過去5年間に日本国内で発生し、公表された代表的なパスワード・情報漏洩事件です。公表日組織・サービス業種主因(社内要因)流出規模・対象2021-01-26京都大学教育・研究認証サーバアクセス制限の設定漏れ学生・教職員 40,751件(ID・メール・ハッシュPW 等) (ScanNetSecurity)2024-11-08ウエルシア薬局小売(EC)従業員がサポート詐欺で遠隔操作ソフトを導入顧客 39,805件+従業員 931件(ID・PW 含む) (株式会社アクト - サイバーセキュリティのエキスパート)2024-10-30カレルチャペック紅茶店ECサイト脆弱性放置 →4年超不正改ざん会員 103,289件(ID・PW 含む) (サイバーセキュリティパーク)2024-11-12mog(こども栄養バランス)EC決済カートの改ざん放置会員 3,484件(メールID・PW 等) (INTERNET Watch)2024-11-01ジャパンライム受託研修メール誤送信(ダブルチェック不足)受講者 6,804件(ログインID・PW 等) (サイバーセキュリティ.com)2024-10-22BKジャパン(バーガーキング)外食アプリの脆弱性管理不足会員 38件(メール・アプリPW・カードブランド) (INTERNET Watch)2025-04-07日本大学教育経緯不明だが学内メール+PWが外部PCで発見教職員等 870件(メール+PW) (日本大学)2025-05-07PR TIMESWebサービスコロナ禍で拡張したIP許可リストの棚卸し漏れ+共有アカウント最大 90万1,603件(利用者ID・PW 等) (プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES)事例から見える「パスワード流出」の構造的な課題国内で起きた事例を分析すると、単なる“社内ミス”では語れない、構造的な問題が浮かび上がってきます。具体的には、以下のような傾向が顕著です。1.「ヒューマンエラー×技術的な穴」の複合型が多いIP制限やアクセス権の棚卸しが不十分なままリモートワーク体制へ移行し、意図せぬ外部アクセスが可能になっていた。2.「共有アカウント文化」の弊害共通アカウントは、責任の所在不明・パスワード更新遅れなど、リスクを増幅例:PR TIMESでは複数人でID/PWを使い回していたことで、不正アクセス時の追跡が困難に3.教育機関や中堅EC/IT企業は開発体制の弱さが表面化しやすい人的ミスが可視化しにくく、長期間気づかれない傾向も。例:京都大学やチエルでは、開発環境に放置されたデータやテスト設定が本番環境に影響4.「個人情報漏洩」として一括報告されやすい例:ID・PWのほか、氏名・メールアドレスなども含めて事故として処理されるため、パスワード漏洩が単独で切り出されることはまれです。このように、漏洩の背景には単発の「うっかり」だけでなく、仕組みや文化の継続的な課題が根付いているケースが多いことがわかります。さらに深掘りしたい場合の調査チャネル最新のインシデント事例や傾向を継続的に把握するには、以下の情報源が有効です。情報源内容特徴JPCERT/IPA 注意喚起セキュリティ設定ミスや事故事例組織名は伏せられるが、傾向分析に最適ダークウェブ監視サービスID・PWなどの流出を自社ドメイン単位で検知実被害防止に直結。有償のものが多い脆弱性診断レポートアクセス制御の不備などを診断内部統制の評価にも活用可能セキュリティ専門メディア(例:ScanNet Security)事例紹介、解説記事など企業研修や啓発資料としても便利これらの情報源を定期的に活用することで、再発防止と早期検知の体制構築が可能になります。再発防止に役立つチェックリスト情報漏えいを未然に防ぐために、以下のチェックリストを活用し自社のリスク管理状況を点検しましょう。区分簡易チェック推奨施策アクセス許可管理退職者・異動者のアカウント棚卸しを四半期ごとに実施しているかIAM/SSO 連携+自動ディセーブル共有 ID管理者権限を複数人で共有していないか個人ごとの特権 ID 発行+ PAM 導入テスト/検証環境本番データをコピーしていないか - 疑似データ生成ツール利用 - Terraform 等による IaC とセキュリティスキャン監査ログ重要 SaaS/IaaS の管理操作ログを外部に長期保管しているかSIEM 連携、異常操作の UEBA 検知従業員教育パスワード使い回し・持ち出し禁止を年1回以上 e-learning で周知か釣りメール演習+ MFA 強制パスクラが実現する“パスワードからの解放”こうしたパスワード事故を防ぐためには、「人」に任せず、「仕組み」で管理することが不可欠です。パスクラは、次のような機能で組織の情報セキュリティを強化します。パスワードの一元管理と定期的な棚卸し複雑なパスワードの自動生成・自動変更利用履歴の可視化によるアクセス監査共通IDの廃止と、役職に応じた厳格な権限管理セキュリティ事故は「想像力」と「仕組み」で防げるパスワードに起因する情報漏えいは、実は「想定していれば防げた事故」であることが大半です。「まだ問題は起きていない」からといって、問題がないわけではありません。むしろ、今のうちから具体的な対策を講じておくことが、組織の信頼を守る第一歩となります。